第6回「効きそうな食品」のかしこい利用(2)ヒトが食べて効くか
2005年10月01日
「効く」という表示は食品には認められていないといわれても、腑に落ちない方もいると思います。確かに商品には明示されてはいませんが、「○○にいい」とか「△△が治る」という話は“常識”のようになっています。そしていつの間にか「効きそうな食品」が「効く食品」となってしまうのです。ここにひとつの落とし穴があります。
(2)「ヒト」が「食べて」「効く」ことの証明
1.A大学のB教授が、××に抗ガン作用があると発表。でも、よく読むと試験管の中でガン細胞に××の抽出
物を振りかけたらガン細胞が死んだとか、ネズミのお腹の中に××エキスを注射したら、ガンが小さくなった
というもの。ヒトが食べた結果ではない。
2.C博士が、ネズミに××エキスを餌に混ぜて食べさせたらガンが消えたと報告。これもヒトが食べた実験結
果ではない。
「効きそうな食品」の情報は、ほとんどが1.か2.のレベル、つまりヒトが食べての効果ではないのです。では、なぜ「ヒトが食べて」が重要なのかを考えてみましょう。
●ヒトで効果があるかどうかはヒトで試験しなければ分かリません。薬の効き方や副作用の出かたは、ひと
り一人の体質(遺伝子)によって違うことはよく知られています。ヒトの間でも違うのですから、種が異なるネ
ズミやイヌでの実験結果がそのままヒトに当てはまるとは限らないのです。
●「食べて」なのかどうかかも重要です。食品ですから必ず消化と吸収の過程を経ます。口→胃→腸→血液
→効果をあらわす臓器・器官の道中で、消化されて効きめがなくなったり、吸収されないで素通りする成分
は、試験管の中でいくら威力を発揮したとしても、食べては効きめがありません。実際に、治療用の薬でも
注射で直接血管内に入れないと効果がないものがあります。内服では胃腸内で消化・分解してしまうから
です。
●最後に、「効く」かどうかが問題です。「ヒトが食べて効く」ことを証明するためには、一定の条件の下に、
××成分を食べたヒトと食べないヒトを分けて比べてみなければなりません(無作為比較対照試験という)。
実際には、食品でこの試験を行うことは非常に困難といわれます。10年単位の時間と少なからぬ費用がかかるので、日本ではあまり行われていないようです。ということは、「効くといえる食品」はほとんどないということになります。それでは、「効きそうな食品」は全く効果がないのでしょうか?
長い食経験や、動物試験などで効果が認められているものには、おそらく有効なものも数多くあると思われます。ヒトに対する効果や害についてはっきり分かっていないことを理解した上で、安全性を確かめながら試してみるということになるでしょうか。