上手にセルフケアメディケーション

カテゴリー

知って得する「食と薬の話」
ケンコージョイ情報管理室からお届けする連載エッセイです
セルフメディケーションとOTC薬
役立つOTC薬の情報をドラッグストア現場からお届けします
cate_btn03.gif
良さそうな情報に惑わされず、自分自身の健康に必要なものかどうかを適切に判断するための情報をお届けします

« 2011年01月 | TOP | 2011年03月 »

第70回 健康食品情報を読み解く(5)・・サプリに抗アレルギー作用?

2011年02月01日

昨夏の猛暑の影響で今年の花粉飛散量はすごいと予想されているようです。毎年のことですが、この季節になるとさまざまな“花粉症克服術”が報じられます。「花粉症サプリメント」の広告もよく目にします。甜茶、ケルセチンなどが人気ランキング上位に入っているとか。甜茶やケルセチンのポリフェノールにはアレルギー症状のもとになるヒスタミンの抑制作用、抗ヒスタミン作用があるとされています。もし効果が得られる程度であれば以下に述べる点に注意が必要でしょう。ヒスタミン抑制作用、抗ヒスタミン作用・・?そう、鼻炎薬でおなじみの作用ですね。ヒスタミン抑制作用(ヒスタミンの放出を抑える)と抗ヒスタミン作用(ヒスタミンの働きを弱める)は違いますが、サプリメントの世界では同じように、あるいは混同して使われており、ヒトでの確かな検証もありません。

抗ヒスタミン薬についてはこのコラムでは何回か取り上げています(No.44 ,No.47)が、今回は添付文書に書かれた注意書きの読み方という視点から書いてみます。

抗ヒスタミン薬は、鼻炎薬、かぜ薬、咳止め薬、乗り物酔い止め薬、じんましん薬などに広く配合されていますが、困った副作用として「ねむけ」があります。これらの薬剤の添付文書には「服用後、乗り物または機械類の運転操作をしないで下さい」と書かれています。居眠り運転防止のためだと思いますよね。しかし、最近の研究によれば、この注意書きはもっと深読みする必要がありそうなのです。

OTC薬(一般薬)の抗ヒスタミン薬(マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸クレマスチン、ジフェンヒドラミンなど)は、「ねむけ」の他に「認知能力・判断力の低下」を起こすことが専門的には知られています。「自分は眠くならないから大丈夫・・」と思って運転をしている人は大勢いると思われますが、ここに落とし穴があるというお話しです。

抗ヒスタミン薬では、軽い飲酒と同様ブレーキを踏むタイミングが遅れたり、左右の安定性を保つ能力が損なわれて追突しやすいことがわかっていますが、この作用が服用後どの程度続くかを証明した研究が発表されました(2010/12/22朝日新聞報道)。

東北大チームが同大のPET(ポジトロン断層)装置を使って、抗ヒスタミン薬のうち眠くなるタイプと眠くならないタイプとを8人の被験者に飲んでもらい、12時間後の脳内の残存量を比較したもの。結果によると、抗ヒスタミン薬は服用後12時間たっても脳の中から抜けきらず、経験的に知られる「薬の二日酔い」が世界で初めて実証されたという。 OTC薬に使われている抗ヒスタミン薬のほとんどは眠くなるタイプで、12時間後の脳内の残存量(薬が作用する場所に残っている割合)は50%であり、強い眠気と脳の機能障害が起きるレベルだった。研究者は、「車の運転や受験を控えた夜の服用にはやはり注意が必要だ」と呼びかけている。これからの季節が心配である。行動には「認知機能が下がっている」という認識が必要かもしれません。