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第72回 健康食品情報を読み解く(7)・・(健康)食品情報と風評

2011年04月01日

3月11日、未曾有の大災害が発生し多くの人の命と生活が奪われました。加えて原子力発電所事故も起こり、世の中の不安が高まっています。

このコラムでは、前回、ヒトが食べたときの効果が科学的に検証されていない健康食品の情報について、あまり周囲の雰囲気を読まない方がよいと書きました。健康食品の効果情報はいわば風評に負うところが大きいわけですが、いま、もっと深刻な「風評」の問題が起こっています。

原発事故がニュースになった初期のころから、「雨に当たると毛が抜ける」「昆布を食べなければ」「イソジンうがい薬の買い占め」などなどの情報が駆け巡りました。

専門家は「冷静に。直ちに人体に影響はない。ヨードの摂取を指示する段階ではない。うがい薬は決して飲まないように」と訴えましたが、実際に避難や野菜類の出荷停止、摂取制限がおこなわれたので、新たな風評が広まっているようです。

ここで、私達は何を信じて、どの様な行動を取るのかが問われることになります。

ポイントは、(1)放射能の影響を正しくとらえる  (2)避難や出荷・摂取停止が指示された意味を理解する(3)リスクのレベルと対象者を正しく評価し、各自の生活を考えるなどでしょうか。

このうち最も重要な(1)に関しては、日本における放射能被爆や放射線医学の複数の専門家からの情報が出されていますし、政府の発表・報道もそれらの科学的事実をふまえた妥当なものだと評価されています。福島第一原発事故そのものは重大な結果を引き起こす危険性をはらんではいますが、現時点での人体への健康被害リスクは、空気、水、野菜、牛乳いずれにおいても「ほとんどない」という専門家かの情報を信じて判断するのが賢明なようです。ただし、ハイリスク対象者としての子供にはレベルに応じた特別の対策が取られるのは当然です。

(2)は国民の健康を守るための国としての施策ですから従わざるを得ませんが、この場合には、各地点での正確な放射線量の測定と結果公表が不可欠です。

(3)については、まさに風評に惑わされない、風評情報を発信しないことが重要です。

不安が不安を呼んで、避難対象地域への偏見などの社会現象も起きているようです。健康食品の効果風評も問題ですが、こちらはより深刻です。

冷静に考えれば、日常生活の中にも今回の放射線汚染レベル以上に危険性なものがあります。発がん性との関連で問題になったアスベストの環境中濃度は常時監視されてはいませんし、今回のレベルの放射能を1カ月間浴び続けるよりも、たばこを一箱吸う方が寿命を縮めるということも知られていることです。葉菜や牛乳の種類や産地を拡大解釈して不必要な買い控えをしたり、放射能障害に効くとされる食品の買いだめに走るなどは、風評を一層拡げることになります。