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第75回 安全・安心と情報 (3)・・タバコのかすかな臭いの危険性

2011年07月01日

 私達の日常生活にはさまざまな“危険"が潜んでいます。その中で食物、水、空気などに含まれる危険物質の多くには規制基準が設けられ、私達の安心・安全が守られています。しかし、3月の大震災に端を発した放射能汚染の問題では、基準値を巡って地域住民の不安が拡がりました。

 また、私達の健康にとって最大級の危険物質であるタバコの煙(受動喫煙)には規制や基準がないに等しいのが現状です。

 ところで、身近な危険物質の規制基準がどの様に決められているかをご存知でしたか?規制基準は、ある危険要因に一生さらされた場合に、さらされなかった場合より増える死亡(超過死亡)を基にして決められます。10万人当たりの生涯死亡リスクが何人という数値として表現されることが多いようです。

 たとえば、
  ◆食品の残留農薬基準:平均的な食生活を一生続けても、各々の農薬で超過死亡が一人もでないように決められている
  ◆アスベストの敷地境界基準:一生アスベスト工場のすぐそばに住んでも、アスベストの吸入により悪性腫瘍で死ぬ人が10万人中6.7人以下になるように決められている
また、環境中の最強の毒物と言われるダイオキシンでは、現在の日本人の平均的な食生活を一生涯続けた場合、食品に含まれるダイオキシンのために癌死する人は10万人中100人とされていますからかなり危険です。

 ではタバコ煙(受動喫煙)はどうでしょうか? かすかにタバコの臭いがする場所での10万人当たりの生涯死亡リスクは600人(慢性:長い時間過ごす時)と算出されていますから、家庭や職場での受動喫煙によるリスクはダイオキシンの比ではありません。にわかには信じられないかも知れませんので、ちょっと詳しく見てみましょう。

 最近PM2.5 (ぴーえむ・にーてんご)という文字を見たことはありませんか?微小粉塵といって直径が2.5μm未満の微小粒子濃度のことです。毛髪の直径の約30分の1ぐらいの粒子が1m3の空気中に何μg含まれるかを表すものです。なぜPM2.5 が問題になるかというと、直径が小さいので、肺の奥深く肺胞まで入り込み、炎症、動脈硬化、がん、気管支ぜんそくを引き起こすからです。

 ちなみに、「ほんの少しタバコの臭いがする時」はタバコ由来のPM2.5 は1μg/m3です。「タバコが目にしみる時」は4μg/m3 です。そしてPM2.5 が1μg/m3増えると、全死亡リスクは0.6%(慢性)増えると報告されています。このデータを基に、10万人当たりに換算すると生涯死亡リスクは600人です。家族喫煙では50μg/m3で50倍ですから全死亡リスクは30%増えます。「100mSv(ミリシーベルト)以上の放射線を受けた場合、がんなどで亡くなる危険性は100mSvあたり0.5%増える」というデータとよく比較されますが、どちらが危険かではなく、高い受動喫煙の危険性を減らすことが重要なのです。