上手にセルフケアメディケーション

カテゴリー

知って得する「食と薬の話」
ケンコージョイ情報管理室からお届けする連載エッセイです
セルフメディケーションとOTC薬
役立つOTC薬の情報をドラッグストア現場からお届けします
cate_btn03.gif
良さそうな情報に惑わされず、自分自身の健康に必要なものかどうかを適切に判断するための情報をお届けします

« 2011年08月 | TOP | 2011年10月 »

第77回 安全・安心と情報 (5)・・OTC鼻炎薬がやめられない?

2011年09月01日

 「アレルギー性鼻炎」の患者数は年々増え続け、10人に1人以上が罹患していると言われています。花粉によるアレルギー性鼻炎は、春のスギ花粉症が筆頭ですが、秋にも多く見られます。このような季節性の鼻炎のほかに、「通年性」と呼ばれるアレルギー性鼻炎があり、アレルゲンは、ハウスダストやカビ類などとされています。
症状は「鼻づまり」「鼻水」などで、日常生活上不都合であるばかりでなく、睡眠障害も重大な問題となります。根本的な完治は難しいとされ、対症療法としてOTC点鼻薬、内服薬が用いられています。長期連用している人も多く、まとめ買いする人も少なくありません。このような方々にとって、少し気になるニュースが流れました。

 5月13日、厚労省麻薬対策課から「プソイドエフェドリン塩酸塩等を含有する一般用医薬品の販売時における購入理由の確認等について」という通知が出されました。「薬局の店舗にて購入したと思われるプソイドエフェドリン塩酸塩を含有する一般用医薬品からプソイドエフェドリンを抽出するなどして、覚せい剤を密造した疑いのある事案が発生したため」とのことです。内容は、「1回の購入量が60日分以上、もしくは7日以内に60日分以上の服用量にあたる量を購入する人に購入理由の確認をせよ」というもの。大容量のもので5箱分程度に相当する量です。英国をはじめとする海外ではすでに、管理・規制を強めていることもあり、日本においても販売方法等にしばりがかかりそうだと報じられています。鼻炎薬が手放せないという方にとっては、困った事態となりそうです。

 今回の規制は、OTC薬の目的外使用の理由によるものですが、医薬品として使われる場合でも鼻炎薬の長期連用は好ましいものではありません。内服用鼻炎薬の主成分は、抗ヒスタミン薬と血管収縮薬です。抗ヒスタミン薬の危険性(副作用としての眠気と認知障害)については第70回で書きました。
血管収縮薬(プソイドエフェドリン)は、交感神経を刺激して鼻粘膜の血管を収縮させ、鼻づまりを解消する一方で、高血圧、心臓病、甲状腺機能障害、糖尿病を悪化させるので、これらの疾患の方には使用禁止となっています。
かつて、同類薬のフェニルプロパノールアミンと脳出血の因果関係が明らかになり、その代替薬としてプソイドエフェドリンが使われるようになリました。多少弱いとはいえ同様の作用、副作用があります。また、「プソイ ドエフェドリン含有OTC薬服用後の心筋梗塞」の症例報告が出され、健常な若者においても危険性が示されました。

 鼻炎症状はつらく、困った状態であり、症状緩和のために多くの人が鼻炎薬を使用しています。プソイドエフェドリンには、弱いながら依存性があり、リバウンド症状も見られるので、このことが鼻炎薬の長期連用を助長している可能性があるとする報告もあります。安易に薬を使わず、鼻炎の原因と治療法をもう一度見直し、薬に頼らないで症状を緩和する方法を探すことが必要かもしれません。