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第73回 安全・安心と情報(1)・・放射線障害を防ぐサプリメント?

2011年05月02日

前回福島原発事故に関して「風評被害に惑わされないで」と書きました。その後、危険の度合いや国の政策が刻々と変化し、不安や不満が高まっています。その中で生きる人々は「何を信じればいいのか?」と焦りを隠せません。しかし、個人が自分の責任で対策がとれない以上、責任をもった国の情報を信ずるしかないでしょう。少なくとも科学的に認められたデータに基づいていると思われるからです。

一方、 インターネット上には「放射線被曝の害から身を守るために抗酸化物質を取ろう!」というサイトがいくつも見られます。こんな状況の中で、自己防衛のためにサプリメントなどを取ろうとすることもまた無理のないことかも知れません。

放射線障害が起こる仕組みは次のように考えられています。生体内の水への放射線照射により、スーパーオキシドアニオンラジカル (O2-)やヒドロキシラジカル (・OH)という二つのフリーラジカル(非常に不安定で、発生するとすぐに周りの物質とくっついて酸化してしまう。人の体の中では常に発生しているが、体自体が無毒化する仕組みを持っているので、通常は大きな害はおよぼさない)が発生して遺伝子や細胞を傷つける。したがって、理論的にはフリーラジカルによる酸化を防げば、障害を受けないで済むことになります。つまり抗酸化物質(ビタミンCや ビタミンE、α-リポ酸など)が役立つかも知れないというわけです。

しかし、2004年〜2005年にかけて発表されたビタミンC、ビタミンE、カロチノイド等の抗酸化物質をボランティアに投与する大規模な試験(二重盲検法という信頼性の高い試験)は、これらの抗酸化剤がフリーラジカルを消去できないことを示しました。サプリメントや代替医療の世界では、さまざまな抗酸化物質が予防に有効と言っていますが、その根拠となるデータは、ほとんどが動物実験です。ヒトでは実験が難しいので、疫学調査(信頼性の高い調査法)が必須ですが、科学的に信頼のおける結果は得られていません。

ちなみに、医療の分野では、ビタミンC,ビタミンE、α-リポ酸などの抗酸化物質が放射線障害の予防薬として用いられることはありません。むしろ、α-リポ酸による自発性低血糖症やコエンザイムQ10と降圧剤または血糖降下剤との相互作用など、過剰摂取による副作用が心配されます。
最近は、いろんなところで「安心・安全」が語られていました。たとえば、「食の安全・安心」「安心・安全な街づくり」、あるいは医療分野でも「医療の安全・安心」・・という具合です。そんな言葉になんとなく安心していたような気がします。

しかし、あの日(2011/3/11)を境に、正真正銘の「安全・安心」が突きつけられています。住む場所の安全・安心から考え直さなければならなくなりました。そんな中で、身近な「安全・安心」が正しく判断できるような情報をお伝えしていきたいと思います。