上手にセルフケアメディケーション

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セルフメディケーションと健康食品

15.上手にセルフメディケーション「賢い健康食品の利用のために」 

2017年03月05日

「上手にセルフメディケーション」は今回が最後となります。
健康な生活を維持するためのセルフメディケーション(自分の健康に責任を持ち、
食事をしっかり摂り、軽度な身体の不調はまず市販薬などを使用して手当てする)を
進める上で大きな関わりを持つ「OTC薬(市販薬)」や「健康食品」について、
2005年4月から143回にわたり書いてきました。終盤の2016年1月からは、大きく変わった
日本の食品制度について現状と問題点をとりあげ、健康食品はセルフメディケーションに
どのように役立てられるのか、また上手に取り入れるための情報は適切かなどを考えて
きました。
このシリーズのまとめとして、あらためて健康食品の賢い利用(健康を害さないための)に
ついて書いてみます。

ヒトの身体に何らかの保健的効果があると表示できる食品として国は保健機能食品という
カテゴリーを設け一般食品と区別しています。保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、
機能性表示商品)はあくまで食品ですから医薬品のような効果はなく、表示できる文言にも
制約があります。しかしこれまで何度も書いたように、医薬品並みの効果を連想させるような
商品のパッケージや宣伝によって間違った認識や利用法が広まり、時に思わぬ健康障害が
生じる可能性があります。
一般社団法人 くすりの適正使用協議会が実施した「健康食品・医薬品の知識と意識に
関する調査」の結果に表れた次の点は問題です。

*健康食品に「副作用がある」ことを理解していない人が半数以上であった 
 これは困ったことですが無理のないこととも言えます。なぜなら、食品には薬のように
副作用の情報は表示されていないからです。副作用と言ってもいろいろあります。
含まれる素材そのものの毒性もあれば、飲み合わせや食べ合わせの結果害になるもの、
あるいはアレルギー反応を起こすものなどもあります。

*健康食品と医薬品の併用を医療関係者に伝えたことがない人が半数であった。
健康食品に含まれる成分が病気そのものを悪化させたり、治療薬の副作用を強めたり、
効果を弱めたりする場合があります。医師や薬剤師に併用を伝えないと、間違った治療に
つながることもあります。

*同じ効能や機能がうたわれていても、健康食品と医薬品では「効き目が違う」ことを
理解していない人が約4割であった。
 本来健康食品に薬と同じ効能や機能が謳われることはあり得ないのです。ですから
 約4割の人は巧みな誘導や誇大な表示によって騙されているということになります。
 結果として薬との区別がつかなくなり、必要な治療が遅れることもあり得ます。

以下のような光景は日常的に医療の現場で起きており、薬剤師を悩ませています。
薬剤師が入院患者に「持参薬を確認させて下さい」というと、テーブルの上に沢山の
健康食品が並ぶそうです。成分の作用や含有量が不明な健康食品は治療の妨げに
なり得ることから使用の中止が原則ですが、自分が飲んでいるのは薬だと思い込んで
いる患者さんに対してどのように説明するかに悩むそうです。
 
不要な健康被害などを起こさないよう賢く健康食品を摂るために、健康食品に対する
正しい知識と理解を持ちましょう。健康に不安を感じたり、病気を早く治したいと思ったとき、
健康食品が自分に本当に必要なのかを考えてみましょう。そして健康食品は宣伝されて
いるほどに効果は無く、不都合なことは表示されていないということを思いだしてください。

安全性や有効性が不明確なものが多い健康食品の中から「良さそうなもの」を選ぶ
ポイントを挙げるとすれば、難消化性デキストリン(食物繊維)、大豆イソフラボン、
EPA・DHA、ビフィズス菌など通常の食事の材料等に由来するものなどでしょうか。
食事の範疇を超える不自然な成分は避け、自然な量を摂ることを目指してはいかがでしょうか。

14.上手にセルフメディケーション「健康食品とのつき合い」 

2017年02月05日

食品は嗜好的に摂られることもありますが、多くは健康を維持するために必要なもの
として摂られます。健康の維持には身体を作る「栄養成分」と身体の状態をより良く
維持していくための「機能性成分」が必要で、それらを食物として外部から取り入れ
なければなりません。
さて健康食品ですが、食品とはいっても健康を維持する食べ物(食材)でもなく、
病気を治す医薬品でもないので、「体の機能性を高めるかもしれない」として期待
されるものということでしょうか。国では現在このような食品を「保健機能食品」と
その他の「いわゆる健康食品」とに分けています。
では「保健機能食品」とはどのようなものでしょうか?
生体の生理機能を調整する働きをもつ、つまり健康を維持するために器官や臓器、
神経、ホルモン分泌、免疫力などの働きに影響を与える食品ということになります。

健康食品は加工品です。健康食品の出現以前には必要な機能性成分はすべて
食事として摂られていた筈です。現代では、食事だけでは足りないのでしょうか?
この視点から考えれば健康食品は健康維持に必要なモノか否か、どのように
摂ったら良いのかという原点に戻ることができるのではないかと思います。

1990年頃から食品の機能性が注目され、2016年には健康食品の市場規模は
7,500億円をも越えると予想され、高齢者の半数以上が何らかの健康食品を摂って
いるという調査結果もあります。この様な健康食品摂取が国民の健康度アップに
役立っているというデータはまだないようですが、市場経済には大きく貢献している
ことは間違いありません。奇しくも巷では次のような会話がささやかれています。
患者「先生、この健康食品は効きますか?」医師「ええ、懐によく効きますよ」

 これまで、さまざまな食品について、さまざまな角度からみてきました。
取り上げた食品は「いわゆる健康食品」、特定保健用食品、機能性表示食品などですが、
内容的にはその商品の「売り」となっている素材の成分についての効果の信憑性や
表示方法の違法性などの情報でした。食品の選択をするときの判断材料になればという
思いで書いてきましたが、商品の実態と情報として表示される宣伝文句がかけ離れている
モノが多く選択がしにくくなってきたように思えます。
素材(原材料)に関する信頼性の高い科学論文情報(国立健康栄養研究所「素材情報データ
ベース」など)ではまだ認められていないような機能性を謳う商品が圧倒的に多いのです。

たとえば、「肌の水分保持に役立ち、潤いを保つ」と謳うヒアルロン酸商品。
「膝関節の柔軟性、可動性をサポート」と謳うコラーゲン商品。
「骨の健康に役立つ」と謳うβ−クリプトキサンチン商品(みかん商品)。
「目の疲労感、目の乾き、ピント調節機能の低下を緩和する」と謳う
ビルベリー由来アントシアニン商品。
「お腹の脂肪(内臓脂肪)・体脂肪を減らす」と謳う「グラブリジン含有甘草抽出物」を
関与成分とする商品などなど多数。

なぜこのようなことが起きているかと言えば、科学的信頼性の低い報告などを根拠と
するものも機能性表示食品として受け付けられているからです。
このような商品でも広告では決して「確かではないが効果があるかもしれない・・」など
とは表示せず「○○を下げる、減らす、高める」などと強調しています。
さてどのように選択しましょうか。

13.上手にセルフメディケーション「もし、健康食品が本当に効いたなら」

2017年01月05日

 2015年4月1日から施行となった「機能性表示食品制度」により、機能性表示食品の
市場見込みは膨らむ一方で、2016年は700億円にもなるとの予測もありました。
なぜこの種の食品がこうも売れるのか。健康維持にいいのか。薬のように効くのか。
市場・業者の戦略にのせられているのか。業者の意向を受けた国の経済戦略である
ことは間違いないのですが、いまや国民のセルフメディケーションの中に深く入り込んで
いる健康食品の「効果」については注意が必要です。

◎「健康食品」は食品か薬か
「食品には医薬品的な表示・表現が認められない」とする薬機法(医薬品医療機器等法)の
規制の中で唯一身体に対する効果を謳うことができた「トクホ」が一世を風靡しましたが、
最近では実際に売られている商品が3分の1にまで減っていて、より規制の緩い
「機能性表示食品」にお召し替えをして再登場しているそうです(12月27日朝日新聞)。
なぜかと言えば、効果の検証がトクホより不確かであっても「機能性効果の表示」が
トクホより自由にできて、なおかつ費用も時間もかからないからです。今やテレビや
インターネット上では「効果」について医薬品と区別ができないような宣伝がされて
いますが、もし本当に効くならおそろしいことも起こり得ます。

◎健康食品が本当に効くならば

�^緻�品と同様に、体質や病気や飲んでいる薬に対する注意がしっかりと
表示されていなければなリません。たとえば、

 *ナットウキナーゼ((No.9 2016/09/05)
  もし業者の言うように「ドロドロ血の解消と血栓症予防に対する効果」が
  大であれば、抗血液凝固薬を飲んでいる人の出血リスクが高まります
 *内臓脂肪を低減させる成分:β-アドレナリン受容体を刺激する(エノキダケ抽出物など)
  もしβ-アドレナリン受容体(β1,β2,β3の3種類がある)を刺激する作用により
 ダイエットに効果があるのであれば、心血管系、泌尿器系、呼吸器系、生殖器系など、
 多岐にわたる臓器にも影響を及ぼすことになり危険です

��安全性に対する表示もきちんとされていなければなりません
 効果を大いに謳っていながら安全性を問われると、業者は「サプリに含まれる成分
の量は医薬品に比べてはるかに少なく、生の食品に換算して○gにすぎない」と言う。
医薬品と同様、一定の効果(作用)があると言うことはそれに応じたリスクもあることです

��サプリメントには許可されていない医薬品成分等が含まれていることがあります。
医薬品としての厳重な管理がなければ危険な成分です

 *グリベンクラミドを含むダイエットサプリメント
  糖尿病治療薬で、副作用として低血糖、無顆粒球症、溶血性貧血、肝炎、
  肝機能障害、黄疸、過敏症、吐き気、胃腸障害などを起こします

 *デキサメタゾンを含む疼痛緩和サプリメント
  抗炎症作用が強い副腎皮質ホルモン薬。抗炎症や免疫抑制に使用されますが、
  糖尿病やムーンフェースなどの副作用が起こる可能性があり、連用後の服用中止時
  には、徐々に減量するなどコントロールの難しい薬です

機能性(効果)と安全性(危険性)は表と裏の関係にあります。また、薬や食品の効果や
害は含まれる成分の量に関係します。「ヒトが食べて、全く害がなくてよく効く食品」など
あるわけがないことは冷静に考えればわかることですが、巧みな宣伝にだまされます。

「健康食品」の実態は、一定の効果が認められている成分を害がでない(効果も出ない)
程度に含むものということになります。少しは効くかもしれないと思うのは自由ですが、
害のみが残れば最悪です。

12上手にセルフメディケーション「話題の食品を追って�Φい砲覆訃霾�5 

2016年12月05日

新聞やテレビなどの「公告の落とし穴」にはまらないためのポイントシリーズの最後に、
「体への作用や効果」を謳ったテレビや新聞広告の「確からしさ」を見抜く要点を纏めておきます。

◆情報に惑わされないために      
 食品としての安全性や有効性が明らかでない多種多様な「健康に良さそうな食品」が氾濫し、
売らんかなの情報も飛び交っています。また、情報の確かさについては、科学的な検証の有無が
問われますが、最近は「ニセ科学」も横行しているようです。科学的に立証できない効果や効能を
うたった商品についての法的な措置もしばしば見られます。よりよい選択をするためのポイントを、
もう一度ふり返ってみましょう。
1.有効情報は正しいか:効果について確かな科学的証拠があるか
2.商品の安全性は確かか:責任ある商品管理がされているか
3.その商品を取り入れる価値があるか:必要性が認められるか

 健康食品情報は科学的な信頼性が低い場合が多いと書いてきましたが、ある程度根拠はあります。
しかしヒトが食べて効くと標榜するには科学的検証が足りません。このことを伏せて意図的に効果を
謳えば法に触れるばかりでなく、ニセやサギになってしまうこともあり得ます。

◆ニセ科学を見抜く目を持ちましょう
 いわゆる健康食品の宣伝物の中には、ヒトの健康上の不安を煽ってさまざまな商品を売りつける
ものも沢山あり、ニセ科学も横行しています。このたぐいの表現の中で、「血液ドロドロ、サラサラ」
は典型的で、中年以降の人を惑わせます。この表現は分かりやすいですが、科学的には非常に
不正確で、時に人を混乱させたり悪徳商法に巻き込んだりします。
血液がサラサラになるとしてさまざまな高額商品を買わされている実態が、国民生活センターに
よって発表されています。手口は、指先などから採血し使用前使用後の顕微鏡像をモニター画像で
見せ、「血液はドロドロ」だというもの。
 かつて、「血液サラサラ」の火付け役となったNHKためしてガッテンチームは、実験を重ねて
「用いる血液の量によって、ドロドロにもサラサラにも見える」ということを突き止めて再放送で
釈明しました。ここには一見科学的に見える「実験」などで信じこませるという「しくみ」があります。
 
 ここで大事なことが2つあります。ひとつは、これらの検査が血液を体の外に採りだして
(試験管実験)行われること。血液は空気に触れると固まります。固まらないように薬剤を
加えますので、各血球成分に変化が起こります。つまり本来の生体中の血液の状態とは
違っているということです。
もう一つは、サラサラやドロドロの程度と病気の関係が不明なので、医学的には「血液
サラサラ」だから良いとか、悪いとかの認識は確立されていないことです。これは一例ですが、
正確さに欠ける検査や学説にビクビクすることは得策ではないということが分かるでしょう。

健康食品・サプリメント・ハーブ類による健康被害は、国や自治体から発表されるのは
ごく一部であり、水面下に隠れた被害が相当数あるだろうと感じている医師や薬剤師は
少なくありません。
原因不明の皮膚トラブル、血圧や血糖値のコントロール不良、抗血液凝固作用、
肝機能の低下などが懸念されています。「効く、効いた!」などの情報にのみ目を
奪われることなく、よく情報を見分けて、かしこい選択をしていただきたいと思います。

11.上手にセルフメディケーション「話題の食品を追って�サい砲覆訃霾鵤�

2016年11月05日

新聞やテレビなどの「公告の落とし穴」にはまらないためのポイントについてのシリーズ
4です。今月は「豊かな想像力が利用される」という話しで、グルコサミンを取り上げます。

<グルコサミンの基本の確認>
*グルコサミンはキチン質(エビ、カニの殻など)やムコ多糖類(オクラ、山芋、納豆など
のネバネバ)の構成成分として自然界に存在し、食物として摂取される
*摂取されたグルコサミンは、ヒトの消化管から速やかに吸収され、N−アセチルグルコサミン
となって ヒアルロン酸やコンドロイチンに取り込まれる
*ヒアルロン酸やコンドロイチンはコラーゲンとともに関節軟骨を作っている
*ヒトの体内ではグルコースからも合成されているが、加齢に伴い減少し、関節の動きや
皮膚の構造に変化をもたらす原因の一つとされている
*現在までの検証では、骨関節炎には経口摂取で効果が認められているが、ヒトでの
経口摂取による「変形性膝関節症」への効果はない

<グルコサミンの宣伝>
商品のパッケージにはどこを見ても、膝痛に効くとか治るとかの文言は書かれていない。
一方では、有名人による効果を強調したキャッチコピーがテレビで流され、「効いた、治った」の
お客様の声が並ぶ。
「グルグルグルグルグルコサミン〜♪」「スムーズで軽快な毎日を!」「歩くをトータルでサポート」
「走ることもできる!」などなど、グルコサミン商品の写真と共に発信される。
広告の文言や有名人の言動から、豊かな想像力を働かせて表現されていない効能効果を
感じてしまう。ここに落とし穴があります。

女優さんがにこやかに「階段の上がり下がりがスムーズ」と言えば、「グルコサミンは膝の痛みに効く」
→「グルコサミンは変形性膝関節症に効く」という情報が広まる。
このように直接効くといっていなくても、効果を連想させることも違反なのです。

<グルコサミンを食べるということ>
加齢による膝の痛みや関節痛に悩んでいる多くの人にとっては大いに関心があるところでしょう。
膝関節を正常に保つしくみはとても複雑で精巧です。単に軟骨がすり減って骨がぶつかって痛む
から足りない軟骨成分を食べれば良いなどという単純な話しではないようです。グルコサミンが
関節の機能に欠かせないことは事実ですが、それを食べることで解消しようと考えるのはどう
でしょうか。人の身体では食べた物質がそのまま望むところに行き渡るようなしくみにはなって
いません。グルコサミンを体内に取り入れたからといって、すぐにグルコサミンのままで身体の
各部位に配分されるわけではないのです。また、関節軟骨が年齢とともに減って来るということは
グルコサミンという材料が足りないからではなく、作る能力が落ちてくるからともいえます。
人間は一日に300〜400gのブドウ糖(グルコサミンはグルコース(ブドウ糖)からつくられる)を
摂取しています。必要ならグルコサミンは体内で作られるでしょう。サプリメントのグルコサミン
含有量は1〜2g程度に過ぎません。グルコサミンサプリメントでこの程度の量を摂取しても、
それが広く体内に輸送されたのち、膝まで十分な量のグルコサミンが届くとは考えにくいのです。

<N−アセチルグルコサミン> 
ヒトの体内で役立つのはN−アセチルグルコサミンです。 経口摂取されたグルコサミンは体内で
N−アセチルグルコサミンに変化した後ヒアルロン酸などの構成成分となりますが、経口摂取した
場合のヒトにおける有効性については、十分な科学的検証はありません。

10.上手にセルフメディケーション「話題の食品を追って�さい砲覆訃霾鵤魁�

2016年10月05日

今月も、新聞やテレビなどの「公告の落とし穴」にはまらないためのポイントを見ていきます。
「科学的事実のすり替えや隠蔽」の例として、「酵素」の情報を取り上げます。

酵素の宣伝も新聞の全面広告など大々的です。ネット上でも様々なメーカが宣伝をしていますが、
科学的に正しいことと間違っていることが入り混じったおかしな情報として発信されています。
たとえば次のようなものです。

「酵素は生命活動に不可欠なもので、他の栄養素に比べてもきわめて重要なものです。
酵素は一生に使える量が限られていて年齢とともに減少し、酵素の働きが鈍ると不調を
来して健康障害の引き金になります。食物酵素を十分に補うことが必要です。
便秘解消、美肌効果、血液サラサラ効果、免疫力アップなどの効果が得られます」

この種の記述の要点は、
�々攸任�なければ生きられないので非常に大事な成分である 
��一生のうちに作られる酵素の量は遺伝子によって決められているので、使いすぎると無くなる 
�9攸任�減ってしまうと病気になるので、食べ物やサプリメントなどから酵素を積極的に補う
ことが重要
 
酵素は目には見えないので実感がなく、説明を読めばなるほどと納得してしまうのではないでしょうか。
本当はどうなのでしょうか?
        
<酵素のうそ、ほんと>
�々攸任�なければ生きられないので非常に大事な成分である・・・これは本当です。
  ただ、酵素は他の栄養素のように体を作る成分ではありません。取り入れた栄養素を
 利用して新しい細胞を作ったり不要になったものを壊したりして体を一定の状態に保つ
 ために常に働いている「潤滑油」のようなもので,体内で必要に応じて作られます。
�� 一生のうちに作られる酵素の量は遺伝子によって決められているので、使いすぎる
 と無くなる・・・これはウソです。
 人の体内では遺伝子の指令により、約3000種類の酵素が作られているといわれて
 いますが、それぞれに役目があり、役目を終えてもすぐになくなることはなく繰り返し
 使われます。老化で効率が悪くなることがあっても無くなることはありません。
�� 酵素が減ってしまうと病気になるので、食べ物やサプリメントなどから酵素を積極的
 に補うことが重要・・・ここにすり替えがあります。
 体内で働く酵素は体内でしか作られません。酵素はタンパク質でできているので
 酵素を含む食品を食べてもそのままでは吸収されず、アミノ酸に分解されてしまいます。
 サプリメントなどから補充することはできないのです。

☆「〇〇酵素」と称される健康食品について
  酵素食品メーカーは商品の特徴として、300年以上の長い歴史があり、70種類以上の
 素材を3年以上熟成させ、余計なものは加えていないなどど発表しています。

 ここで騙されてはいけないのは、「〇〇酵素」とは商品名であり、中身がヒトに役立つ
 酵素ではないと言うこと。また、食物酵素をいくら食べても酵素のままで吸収されることは
 ないこと。酵素によって発酵させているので酵素は含まれているが、これは単に多種類の
 野菜や果物の発酵食品なので「〇〇発酵食品」とすべきでものです。

 前回のナットウキナーゼも酵素でした。納豆や発酵野菜は栄養的に優れていても
 酵素の働きは期待できないということです。

9.上手にセルフメディケーション「話題の食品を追って�5い砲覆訃霾鵤押�

2016年09月05日

新聞やテレビなどの「公告の落とし穴」にはまらないためのポイントを前2号にわたって
書きましたが、その中でとくに騙されやすいのが「科学的事実のすり替えや隠蔽」です。
今月の気になる情報として「ナットウキナーゼ」について考えてみます。
まず、「日本ナットウキナーゼ協会」という団体の見開き2ページの新聞広告の見出しに
注目してみましょう。
冬バージョン:「ドロドロ血の方、要注意!冬の脳梗塞・心筋梗塞。
ナットウキナーゼで血栓を作らないからだに」
夏バージョン:「脱水⇒ドロドロ血⇒脳梗塞!?夏こそ血栓予防習慣を」

どちらも有名俳優と大学教授の対談形式で、ドロドロ血の解消と血栓症予防に対する
ナットウキナーゼの効果を強調しています。一見,なるほどと納得しそうな内容ですが、
科学的な事実や用語のすり替え、間違った使い方などが多く不確実は情報が発信
されています。文中のキーワードを確かめておきましょう。

[ドロドロ血(血液ドロドロ)] 対語として「血液サラサラ」もよく使われます。どちらも
医学用語ではありませんがイメージとして分かりやすいので巷に広がっています。
ドロドロ血とは血液の粘度(粘っこさ)が高まった状態のことと考えられ、赤血球数の
増加、血漿中のタンパク質濃度の上昇、血液中の水分量の減少などにより高くなります。
[血栓(血栓症)] 「血液が固まりやすくなっている、血液の流れが滞りがちである、
血管内皮が損傷を受ける」などにより血管内に血のかたまりができる(血栓)。
血栓は血小板とフィブリンの塊です。血栓が肺、脳、心臓の動脈に詰まると肺塞栓症、
脳梗塞、心筋梗塞などの血栓症を起こします。

[血液凝固作用] ケガや手術で血が止まらなければ命にかかわるし、血栓ができて
梗塞を起こしても命にかかわります。ですから、健康人の血液では凝固と溶解の
バランスが保たれています。血液の凝固因子(凝固に関わる10種類以上の糖タンパク質)
の生成の多くに関わっているのがビタミンKです。納豆にはビタミンKが多く含まれています。

[凝固した血液を溶解する線溶系] 血管内に血栓が出来るとそれを溶かそうとする
しくみが働き、プラスミンというタンパク分解酵素が凝固したフィブリンを分解します。
試験管内の実験ではナットウキナーゼにもフィブリンを分解する作用があることが
分かっています。

[納豆とビタミンKとナットウキナーゼ] ビタミンKとナットウキナーゼは納豆に含まれる
成分です。ビタミンKは小腸から吸収され血液に入って肝臓で凝固因子の生成に
かかわります。
一方ナットウキナーゼはタンパク質なのでそのままでは吸収されず腸内で分解されて
アミノ酸として吸収されます。吸収後に再びナットウキナーゼに戻ることはありません。
ナットウキナーゼの生体内での血栓溶解作用は証明されていないのです(血液中に
ナットウキナーゼが確認されたという記録はない)。

[納豆は食べない方が良いか?] 健康な人がナットウを多く食べても血液ドロドロには
なりません。
しかし、血液凝固を起こしやすい人では納豆を多く食べると血栓ができやすくなります。
血液凝固抑制薬(ワーファリン)飲んでいるヒトが納豆を食べると薬の効果を減少させ
血栓ができやすくなります。

[ナットウキナーゼで血栓を防ぐ?] もう答えは出ています。体外(試験管内)での試験で
どんなに血栓を溶かしたり予防したりする効果があっても、酵素ナットウキナーゼがそのまま
血液に入ることはないのですから。

[事実のすり替えと隠蔽] 広告では試験管内試験の効果を生体内での効果にすり替え
ている。また、酵素ナットウキナーゼがそのままで吸収されて血液に入ることはできない
ことを隠しています。

8.上手にセルフメディケーション「話題の食品を追って��気になる情報1」

2016年08月05日

先月号(2016/07/05)で「公告の落とし穴」にはまらないためのポイントを5つ挙げましたが、
最近ではもう少し追加しなければならないようです。大手企業の機能性表示食品などの
新聞広告やインターネット上のホームページなどでは、きれいなカラーのイラストやグラフ
などを用いて医薬品並み(以上)の「効果や作用」を印象づけています。それだけを見れば
確かに効果はありそうで気持ちが動きますが、効果の程度や確からしさのレベルは医薬品に
比べてずっと低いものです。限られた人数や条件での効果や副作用の試験では、大勢の人に
当てはまるかどうかは不明なのです。二つのポイントを追加します。
 
落とし穴の例�� 公告に示されているデータは、受け手が想像する「効果や作用」よりもずっと
低いことが多い
落とし穴の例�� メーカーが示すデータは大勢の人に当てはめられるものではなく、自社に
不利なデータは示されないのが普通である 

今月の気になる情報として「グリシン」について考えてみたいと思います。グリシンと言えば
味の素から出ている「グリナ」でしょう。睡眠サプリとしてグリナが発売されてから10年で
100万人以上の方が使ったそうです。謳っているのは「睡眠改善効果」ですが、100万人の
方は本当に睡眠が改善されたのでしょうか?

ある成分が「効く」というときには、その成分の本質(どんなもの?)と作用機序(どうして
効くの?)を確かめなければなりません。
グリナの成分グリシンとは、必要に応じて身体の中でつくられているアミノ酸で、人では
1日に約45gのグリシンが体内で合成されており、食事として魚介類や肉類などのタンパク質
(何種類ものアミノ酸が結合してできている)からも3〜5g摂取されているといわれています。
グリナの一日摂取量の目安も3gです。

さて、睡眠薬の多くは脳に作用して効果を現しますが、グリシンも脳に作用するのでしょうか?
グリシンを食べると、腸から血中に取り込まれます。しかし、グリシンは脳へは入れない性質を
持っているので脳には作用しません。
それではグリシンにはどのようなしくみで効くのでしょうか?メーカーのうたい文句は
「アミノ酸“グリシン”が深部体温を下げて深い睡眠に導きます」です。

ちょっと変な気がしませんか?
グリシンは本来身体の中で作られているものであり、その10分の1以下の量を体外
から取り入れることによって生命活動の基本である体温が簡単に下がるものでしょうか?
ランチタイムにお肉を沢山食べたら深い睡眠に導かれるでしょうか?

ヒトの睡眠や体温は脳にある体内時計が刻む生体リズムによって調節されています。
この生体リズムは、朝から昼、夜への1日の変化や、季節の変化に対し、効率よく適応
できるように身体の状態を調節しています。睡眠と体温は体内時計を通して影響しあっており、
他の研究で「眠りに入るときには自分で体温を下げている」「眠ると結果として体温が低くなる」
ということが確かめられています。また、深部体温が低いときに眠りやすさが強くなることも事実です。

ここで問題になるのが、メーカーの言うように「グリシンが深部体温を下げるかどうか」です。
メーカーはラットを使った実験を根拠としています。確かに眠ると体温が1℃低くなりますが
末梢血流を増加させて、深部体温を低下させる作用かどうかは明らかではありません。
また、睡眠の質が良くなるという実験もしていますが、試験対象者が11名しかいないので
試験としての信頼性は高くありません。さてどう判断しましょうか?
「作用はないが効果はある」ということもしばしば経験することです(プラシーボ効果)。

7.上手にセルフメディケーション「話題の食品を追って�々�告」

2016年07月05日

 毎日のようにテレビや新聞等には「話題の食品」が満載です。どれも私たちの悩みを解決して
くれそうな「優れもの」のような宣伝です。本当だったら、国の医療費削減政策などたちまち目標
達成でしょう。
 2015年4月に新しい食品制度が始まり、食品は保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、
機能性表示食品)と一般食品(いわゆる健康食品、食材など)に区分されました。この区分はいって
みれば、機能(はたらき、効果)を表示できるものとできないものの区分ともいえます。食品の区分が
明確にはなりましたが、最も新しい機能性表示食品の効果や安全性の検証が事業者の責任に委ね
られることになったのを機に、事実上消費者の目に触れる表示広告に歯止めがかからず「いいこと
づくめ」になりました。今月からはその「いいことづくめ」の根拠について考えていきます。
まず、広告についてです。
 
広告にはお金がかかる事はほとんどの人が知っています。健康食品がもてはやされるように
なってから40年ぐらいになりますが、もともとは医薬品製造会社のような大手企業ではない中小の
会社や家内工業的なところで作られていました。したがって広告はマスメディアではなく、まして
インターネット広告もなく、新聞折り込み広告が主流でした。法的な規制が強化されたこともあって、
今では健康食品の分厚い折り込みはなくなりましたが、変わって大手製薬、食品、飲料会社の
全紙大広告が競っています。格差社会の象徴ともいえるでしょうか。

広告はものを売るために行うものですから、広告費が高かろうとそれ以上に売れていることを
意味しています。では誰が、どんな情報に基づいて買っているのでしょう。医薬品とは違う曖昧な
効果を医薬品並みの効き目と錯覚させたり、法の網目をすり抜けるテクニックを駆使して消費者の
心をつかんでいるようです。となれば消費者としては、巧みな落とし穴にはまらないように気をつける
事が身を守ることになります。

<落とし穴の例>
�,修両ι覆�「効く」とか「治す」とは決して言っていない
商品や広告にはどこを探しても、医薬品の効能効果のようなことは書かれていない。
書けば薬機法違反で罰せられるから。しかし多くの人に「効く情報」がすり込まれるような
巧みな表現がされている
��見る人の想像力を利用している
広告の文言や有名人の言動を、受け手の想像力を利用して表現されていない効能効果に
結びつける。たとえば、グルコサミン。
女優さんがにこやかに”階段の上り下りがスムーズ”と言えば「グルコサミンは膝の痛みに
効く」という情報が広まる。直接効くと言っていなくても効果を連想させることも違反です
��生物学や化学の用語を用いて科学的と思わせる
コエンザイムQ10,α-リポ酸、ヒアルロン酸、核酸、分岐鎖アミノ酸、TCAサイクルなど
の化合物名や生化学用語がそのまま用いられ、あたかも科学的で効果がありそうに宣伝
されている
�こ惻圓簀郢里魄�っ張り出してコメントさせている
途中までは科学的に正しいコメントでも、後半はメーカーの意図に沿う発言をすることが多い。
学者がコメントしても効果の証拠にはならず、研究者としては評価されない。
�ゲ奮愿�事実を途中ですり替えて、騙す

<よくあるパターン>
 〇〇はからだになくてはならない重要成分→年齢とともに減少していく→だから体外から
補給する必要がある→△△には〇〇が豊富に含まれている→〇〇を含む商品へ誘導

簡単に誘導されないように、しっかり見極めましょう!

6.上手にセルフメディケーション「新しい食品制度と健康�Α廖�

2016年06月05日

 事業者の責任において科学的根拠に基づいた機能性を表示できることになった食品
(機能性表示食品)は、すでに300製品を超えています。発売前からいろいろな問題点も
指摘されており、これらの食品はどのような目的で世に出され、どのような方向に進むのか、
気になるところです。まずは機能性表示食品制度創設の目的を確認しておきましょう。

消費者庁が一般向けに出しているパンフレットによると、「機能性を分かりやすく表示した
商品の選択肢を増やし、消費者の皆さんがそうした商品の正しい情報を得て選択できる
ようにした」とのこと。ここで問題になるのが「正しい情報」です。機能性を表示することが
できる食品の表示例を見てみましょう。

<特定保健用食品(トクホ)>
・疾病リスク低減表示ができる(例:コレステロールの吸収を抑える働きがあります)
 消費者庁の審査により効果が確認されているのでリスク低減効果(コレステロールの
吸収を抑える働き)を明言している。

<機能性表示食品>
・関与成分の機能性が表示できる(例:コレステロールを減らす機能があることが報告されております)
 審査がないので低下する等の効果が「報告されている」など表現が弱い場合が多い。
「高い、低い、低下、上昇」などの程度を示す表現や特定の健康増強を標榜する表現はできない。

しかし実際の機能性表示食品の表示では、パッケージの裏側などに決められた表示が小さく
記されているものの、表のキャッチコピーでは「コレステロールを抑える」「脂肪を減らす」など
言い切り型のものが多く、効果が強調されています。

「科学的根拠に基づいている」といえば機能性が表示できることになった機能性表示食品は
トクホの表示をも越えて誇大な表現で宣伝されています。正しい情報といえるでしょうか?

機能性表示食品の科学的根拠のレベルは総じて低いものが多いことは前にも述べましたが、
一旦世に出てしまえば問題にされることはなく、結果的に機能性表現に自由度を与えてしまって
います。このことがトクホや栄養機能食品さらには一般の健康食品の広告にも波及し、健康増進法、
景品表示法等に違反するような表現が増えています。

報道された違反事例です。

<消費者庁勧告事例:ライオンの特定保健用食品『トマト酢生活』>
日刊新聞紙の広告に「『トマト酢生活』は、消費者庁許可の特定保健用食品です」、
「“薬に頼らずに、食生活で血圧の対策をしたい”」などと記載した。健康増進法
第31条第1項の規定に違反するとして消費者庁から勧告を受けた(2016年3月)。
理由:あたかも同商品に血圧を下げる効果があると表示することについて消費者庁長官
から許可を受けているかのように示し、薬物治療によることなく、同商品を摂取するだけで
高血圧を改善する効果を得られるかのように表示し一般消費者の誤認を引き起こす
広告表示であるとみなされた。

<消費者庁措置命令事例:えがおの栄養補助食品「えがおの黒酢」>
(株)えがおに対し、景品表示法第6条の規定に基づき、措置命令を行った(2016年3月)。
理由:「えがおの黒酢」と称する食品の痩身効果に係る表示 について、自社ウェブサイトで
景品表示法に違反する行為(合理的根拠が示されないダイエット効果を暗に示すような表現を
記載し、効果があるという間違った情報発信)をした。

このような事例は今後ますます増えてくることと思われます。食品の機能性表示の緩和は、
消費者庁の建前とは裏腹に、決して消費者の健康維持のためではなく、事業者の利益のため
になされるものであることがよりはっきりしてきました。

5.上手にセルフメディケーション「新しい食品制度と健康�ァ�

2016年05月05日

 事業者の責任において科学的根拠に基づいた機能性を表示できることになった
食品(機能性表示食品)は、3月31日現在で308製品となりました。そのうち機能性の
関与成分として最も多いのが「難消化性デキストリン」ですが、この成分はすでにトクホ
の成分として認められているので安全性の問題は一応クリアされていると考えられます。
では有効性(機能性)についてはどうでしょうか?次の例で見てみましょう。
 
届出番号:A2
<商品名>食事の生茶 
<事業者>キリンビバレッジ株式会社
<機能性関与成分>難消化性デキストリン 
<届出表示>本品には難消化性デキストリン(食物繊維)が含まれます。
難消化性デキストリンは、食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させ
るとともに、糖の吸収をおだやかにするため、食後の血中中性脂肪や血糖値の上昇
をおだやかにすることが報告されています。

この表示では、難消化性デキストリンが、食べた脂肪を吸収されにくくして糞便中への
排出量を増やすという報告があるといっていますが、どの程度排出させるかは分かりません。
他のメーカーも同様で、中にはもっとぼかして「難消化性デキストリンには食事の脂肪や
糖分の吸収を抑える機能があることが報告されています」と記載しているものもあります。

機能性表示食品はその表示する機能性について根拠を示さなければなりません。
各商品の届け出情報を追っていくと「一つの根拠」に行き着きます。ほとんどの
メーカーが引用している「報告」のようです。
それによれば、難消化性デキストリンを一日摂取目安量の3倍ほどを取ったときでも
摂取した脂質量の10%程度しか排出されないようです。つまり、90%は吸収されてしまう
ということです。もともと脂質の吸収率は95%とされていますから、一日摂取目安量
(5g程度)ではほとんど効果はないに等しいでしょう。

しかし、商品パッケージにはいずれも『脂肪の吸収を抑える』『糖の吸収をおだやかに
する』と書いてあるので、食べた脂肪や糖分は吸収されないという過大な期待をさせて
しまう恐れがあります。
巷では難消化性デキストリンはダイエット食品ととらえられているようで、ネット上の
書き込みに「痩せる薬は本当にあった!?難消化性デキストリンの5つの効果に驚愕」と
あって、まさに驚愕させられました。すっかり「やせ薬」になっているのです。
こうなると、摂取量の目安などお構いなしに沢山食べてしまう可能性があります(1日5gでは
効果なし)。難消化性デキストリンそのものには害はなくても、非常に消化されにくいものを
大量に食べればどうなるか、下痢や便秘が起こることが知られています。最近は多くの
飲食物に入っていますから、知らぬ間に摂り過ぎている可能性があります。

大量摂取など異常な使用方法による健康障害は論外ですが、メーカーが確実性の低い
根拠をもとにその効果を強調することは消費者の判断を誤らせます。
機能性や効果について『脂肪の吸収を抑える』のように断定的に言い切れるためには
医薬品並みの検証が必要なわけで、食品には所詮そのようなものはないでしょう。

ちなみに、機能性表示食品より根拠がしっかりしていて消費者庁の審査・許可がある
「特定保健用食品(トクホ)」でさえ外箱に表示できるのは「中性脂肪が高めの方に」
ですから、表示においてはトクホをも越えています。もっとも最近は両者の区別がなく
なっている傾向がありますので、「いわゆる効果」のみで選択されていることが問題です。

4.上手にセルフメディケーション「新しい食品制度と健康�ぁ�

2016年04月05日

 事業者の責任において科学的根拠に基づいた機能性を表示できることになった食品
(機能性表示食品)は、3月17日現在で275製品となりました。そのうち機能性の関与成分
として「難消化性デキストリン(28件)」「ビフィズス菌(21件)」に次いで多いのが「DHA,EPA」
です。これらはすでにトクホの成分として「中性脂肪が気になる方に適する」という表示が
認められています。また、DHA,EPAは医療用の薬としてずっと使われていますし、つい最近
OTC薬(一般薬)としても販売されるようになりました。ということは、中性脂肪を減らす作用が
あることがはっきり分かっているということです。であれば、機能性表示食品でも中性脂肪を
減らす効果がある筈だから手軽に使ってみようと思うかもしれません。
しかし、食品であるが故に大事な情報が伝えられないまま使ってしまう危険性があります。
今回は「DHA,EPA」を関与成分とする商品を例に注意点を見ていきます。

届出番号:A39
<商品名>ディアナチュラゴールド EPA&DHA  
<事業者>アサヒフードアンドヘルスケア株式会社
<機能性関与成分>エイコサペンタエン酸(EPA)ドコサヘキサエン酸(DHA) 
<届出表示>本品にはエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)が含ま
れます。中性脂肪を減らす作用のあるEPA、DHAは、中性脂肪が高めの方の健康に役
立つことが報告されています。

ここで注意しなければならないのは、これらの成分には中性脂肪を低下させる作用ばかりでなく、
他の薬理作用もあるということです。
じつはEPA、DHAの作用で真っ先に挙げられるのが「抗血栓(血液を固まりにくくする)作用」
なのです。ですから医薬品では 、EPA、DHA製剤を中性脂肪低下薬として使う場合には
「血液や出血」について次のような注意が書かれています。

1.使用してはいけない人: 出血している(血友病、毛細血管脆弱症、消化管潰瘍、尿路出血、
 喀血、硝子体出血等にて出血している場合、止血が困難となることがあります)
2.慎重に使用しなければならない人: (1) 月経期間中 (2) 出血しやすい (3) 手術を予定している
 (出血を助長するおそれがある) (4) ワルファリン等の抗凝血薬、アスピリンを含有するかぜ薬・
 解熱鎮痛薬・抗血小板薬、インドメタシンを含有する鎮痛消炎薬、チクロピジン塩酸塩やシロス
 タゾール等の抗血小板薬を飲んでいる
(出血傾向が強くなることがあります)

しかし、食品の場合には、上記の注意に関連する部分としては以下のようにしか書かれていません。

◆以下の方は使用をお控えください
 ・疾病のある方(病気で治療中の方、薬を服用中の方)
  注意事項:疾病に罹患している場合は医師に、医薬品を服用している場合は医師、
  薬剤師に相談してください。
 ・体調に異変を感じた際は、速やかに摂取を中止し、医師に相談してください。

このような表現の中から、医薬品のような注意を読み取れる一般の人はいないと思います。
疾病といってもどんな病気が該当するのか、どんな薬がダメなのかも分からないのに相談
しに行くでしょうか?
食べてはいけない人が「中性脂肪を減らせる」という広告のみを見て摂取した場合は、
異変が起きてからでないと対処できないということです。

3.上手にセルフメディケーション「新しい食品制度と健康��」 

2016年03月05日

 事業者の責任において科学的根拠に基づいた機能性を表示できることになった食品
(機能性表示食品)は、2月25日現在で231製品となりました。そのうち機能性の関与成分
として最も多いのが、「難消化性デキストリン(28件)」「ビフィズス菌(21件)」で、これらは
すでにトクホの成分として認められているものです。しかしトクホでは認められなかったものが
「機能性表示食品」としてお召し替えをして登録されているものもあります。トクホとして認め
られない理由を曖昧にしたまま『身体への効果』をうたっているものについては注意が必要です。
今回は「ヒアルロン酸」を関与成分とする商品を見ていきます。

届出番号:A4
<商品名> ヒアロモイスチャー240 
<事業者>キユーピー株式会社
<機能性関与成分> ヒアルロン酸Na
<届出表示>本品にはヒアルロン酸Naが含まれます。ヒアルロン酸Naは肌の水分
保持に役立ち、乾燥を緩和する機能があることが報告されています。

まず、届け出表示を見てみましょう。商品のパッケージに書かれているものです。
この表示を見て一般の人は「ヒトがヒアルロン酸Naを食べれば、胃腸で消化・吸収
されて肌に届き、乾燥は解消されてみずみずしい肌になるかもしれない」
と思うの
ではないでしょうか?
「ヒアルロン酸Naには肌の水分保持に役立ち、乾燥を緩和する機能があること」は
事実として知られていますが、口から摂取してそのような効果があるかどうかについては、
確かな報告はまだありません。報告はあっても信頼性は低いと考えられています。
なぜかといえば、食べたヒアルロン酸が体内(血液中)に取り込まれるというヒトでの
確かな証拠がない
からです。
この点に関してメーカーはホームページで次のような記載をしています。

■「食べるヒアルロン酸」の肌保湿メカニズムについての考察 
これまでの研究報告から、ヒアルロン酸は、摂取後、腸内細菌によって低分子化
されることが分かっています。ヒアルロン酸が低分子化されることで、腸管から吸
収され、血中に移行し、皮膚に届くことが報告されています。

この考察は一見ヒトが食べた結果についてなされていると思われますが、ここで
述べられている研究報告は、ヒトが食べた時の試験ではなく、ラットでの実験です。
つまりラットでの試験結果をヒトにすり替えています。

じつは、キユーピーの「ヒアロモイスチャーS」という商品が2008年に国が許可する
特定保健用食品を証拠不十分で却下されています。同じヒアルロン酸Naを関与成分と
する商品でした。厚労省がトクホとして認めなかった理由は以下の3点。

1)口から入ったヒアルロン酸が吸収されて皮膚に届くことの証明がされていない)
2)有効性が認められないこと(ヒアルロン酸を飲んだ結果、肌の保水力が上がるのかの
  証明が不十分)
3)健康の維持増進に寄与することが期待できそうにないこと(示されている肌の保水力の
  若干の上昇が、肌の健康維持に意味があるのか)
 

さて、皆さんはどうされますか? それでも信じて買いますか?
なお、他の事業者によって届け出がされているヒアルロン酸商品のほとんどが、
有効性の根拠として「ヒアロモイスチャー240」のデータを引用しているので、同じ問題があります。
科学的根拠の見直しが必要でしょう。

2.上手にセルフメディケーション「新しい食品制度と健康�◆�

2016年02月05日

2015年4月より施行された新しい「機能性表示食品制度」のもと、事業者の責任において
科学的根拠に基づいた機能性を表示できることになった食品は、1月29日現在で210製品
となりました。国の審査を受けたトクホより科学的根拠のレベルが低いのに、トクホにも
なかった「体の部位への効果」をうたったものが出回っています。使用されている成分も
いろいろですが、それぞれの成分が持つ作用を超えたネーミングやキャッチコピーも
見られます。こうなると過大な期待や被害が生じる恐れがあります。
今回からは、届出済の機能性表示食品について触れながら、「セルフメディケーションと
健康食品」について考えていきます。

まず「目のサプリメントとして“日本初”の機能性表示食品」と謳う能性表示食品
届出番号:A7から。
<商品名> えんきん
<届出表示>「本品には ルテイン・アスタキサンチン・シアニジン-3-グルコシド、DHAが
含まれるので、手元のピント調節機能を助けると共に、目の使用による肩・首筋への
負担を和らげます」
<商品パッケージの表示> 
手元ピントの調節力に・・・
中高年の目の健康に・・・手元の小さい字が読みにくい メガネに頼りたくない
<臨床試験済み>近点調節力の変化量を調べた試験を公表
<機能性関与成分>ルテイン、アスタキサンチン、シアニジン-3-グルコシド、DHA

商品名、届け出表示、パッケージの表示から読み取れる「効果」は明らかに
「ピント調節力アップ」でしょう。では、4種類の成分にピント調節作用があるのでしょうか?

目の調節機能に関するデータがあるのはアスタキサンチンのみです。
アスタキサンチン:アスタキサンチンを含むサプリメントを適切に摂取した場合、
一部で眼の調節機能改善に役立つという報告がある(国立健康・栄養研究所「健康
食品」の素材情報データベース)。まだ不十分なデータ。

他の成分について目の機能に関するものは、ルテイン:白内障、加齢黄班変性のリス
ク低減。DHA:ヒト試験の結果により、加齢黄斑変性に対して有効性を示唆。血流促進。
シアニジン-3-グルコシド:抗酸化作用。末梢血流改善の報告がある。

「えんきん」では4種の成分の複合配合が効くと広告していますが、その臨床試験は
専門家の間では評価されていません。つまり、現時点での情報に基づいて、
パッケージ、インターネット、テレビ、新聞などに見られるような宣伝をすることは
「過大な期待や被害」につながります。

このような機能性表示食品を、セルフメディケーションのために食べるかどうかは
一人一人の判断ですが、少なくとも「ピント調節力アップ」を期待するのはどうでしょうか?

老化による眼の調節機能の低下(老眼)は、水晶体の変性(弾力低下)と水晶体の
厚みを調節する毛様体筋という筋肉の衰えとされています。このような状態で目を
使いすぎると眼精疲労による肩こり、目の疲れ、頭痛、吐き気等が起こることがあります。

「えんきん」に含まれる成分は、抗酸化作用や血行促進などの作用がありますから、結
果として目の老化を抑制するかもしれません。目の休養や食事(黒豆、ほうれん草、紅
ザケ、イワシなど)に気を配ってすごし、一時的にピント調節作用のある目薬などを使
うことも上手なセルフメディケーションではないでしょうか。

1.上手にセルフメディケーション「新しい食品制度と健康� �

2016年01月05日

年があらたまりました。少子高齢化が進む時代にあって、これからは自分の健康を自ら
の責任で管理する「セルフメディケーション」の考え方が一層重要になってくると思わ
れます。セルフメディケーションでは、軽度の身体の不調はOTC医薬品(市販薬)などを
上手に用いて自らの健康管理をします。セルフメディケーションの基本は言うまでもなく
きちんとした食事ですが、今や健康を語るときに避けて通れないのが「健康食品」です。
健康食品と一口に言っても人によりとらえ方もまちまちで、商品もさまざまです。健康食
品は本当にセルフメディケーションに役に立つのか?こんな視点から2016年は食品に
ついて書いていきます。

2015年4月に日本の食品制度が変わりました。概略は次のようになります。
 ◆人が口から取り入れるものは、食品と医薬品(医薬部外品を含む)に分かれる
  食品とはすべての飲食物をいう
 ◆食品は、<保健機能食品>と<一般食品>に分かれている
 ◆保健機能食品には、「特定保健用食品(トクホ)」と「栄養機能食品」があり、
   何らかの人体に対する作用の表示が認められているが、健康食品は食材などと
   同じ「一般食 品」であり、効果等の表示は認められていない
 ◆いわゆる健康食品の一部が2015年4月より「機能性表示食品」として
「保健機能食品」の仲間に入った。つまり、人体に対して何らかの効果を表示できる
「健康食品」が新たに誕生した

新顔の「機能性表示食品」は従来の健康食品・サプリメントのような加工品だけではなく
魚や野菜などの生鮮食品も含まれるのでより身近なものもあります。商品には必ず「機
能性表示食品」と書かれていなければなりませんが、目にしたことはあるでしょうか?
これらの商品は、国の審査や認定を得ているものではなく、一定の基準を満たせば届け
出だけで発売できます。国は効果については関与せず、事業者の責任において「おなか
の調子を整える」「脂肪の吸収を抑える」などの科学的根拠に基づいた機能性を表
示できる食品で、12月24日現在171製品が届けられています。

特定保健用食品(トクホ)は国が認めた製品で一応信頼性は高いのですが、審査が厳
しく、認可取得までの時間と費用がかかり過ぎるという業界側の問題がありました。
このような業界の意向を受けて導入された簡易制度ですから、利用する国民のため
の配慮がされているわけではありません。効果や害について確からしさを知りたい
と思ってメーカーにきちんと問合わせられる人がどれほどいるでしょう。「よいこ
と」のみが強調され、個々の利用者の体質や病気(薬)への影響などの情報もないの
で、危険も潜んでいます。健康被害のリスクを全面的に利用者が負うことになりま
す。効果や安全性をチェックしている消費者団体などから出される情報を得ること
も身を守ることになるかと思います。

次回からは、届出済の機能性表示食品について触れながら、「セルフメディケーシ
ョンと健康食品」について考えていきたいと思います。