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第69回 健康食品情報を読み解く(4)・・脂肪を燃やすとは?

2011年01月04日

お正月休みが終わるころ、なにやら体が重〜くなっていることに気づき・・という方もおられるかもしれませんね。新年事始めは「脂肪を燃やせ!」でしょうか。

そこで今回の「読み解き」は「脂肪を燃やすとは?」です。

☆お腹の脂肪を燃焼させる!
☆たまった脂肪を分解・燃焼させる!
☆脂肪を分解・燃焼して・・・!
☆ 脂質の代謝を上げて、体脂肪を落とす!「あぶらを燃やす?」「どこで?」「どんな風に?」

これらのコピーは、「ダイエットサプリメント」の宣伝文句ではありません。今時こんなことをサプリメントに書いたら、たちまち薬事法違反で摘発されます。そう、これらはれっきとしたOTC医薬品のパッケージに書かれている文言です。中身は防風通聖散や大柴胡湯という漢方薬。効能効果の一部に「肥満症」と書かれていることを拡大PRしています。医薬品ですから全く根拠がないわけではありませんが、「肥満治療薬」というわけではありません。それに、どの様なメタボの人でも使えるわけではなく、チェックをしてみればメタボ年齢の人では使えないケースも多いのです。

ともあれ、「肥満症」という効能がありますから、その根拠を探ってみましょう。

「脂肪燃焼!」の根拠とされているのは、漢方薬の中に含まれている「麻黄(マオウ)」という生薬の成分「エフェドリン」の作用です。エフェドリンは交感神経を刺激して、さまざまな作用を現しますが、そのひとつに「エネルギーの消費を高める作用」があるとされています。エフェドリンの作用によって心臓が高鳴り、目は見開き、呼吸があらく、胃の働きはストップなど、戦闘態勢(緊張状態)となります。このような状態が続けばおそらくは痩せるでしょう。実はこの種の作用をもつ薬物は沢山ありますが、どれも肥満治療薬とはなっていません。治療薬として安全かつ有効に使えるものがないからです。では、防風通聖散はどうでしょう。

ここで量的な問題を考えて見ましょう。漢方薬は処方が定められており、決まった種類の生薬が決まった割合で配合されています。例えば、マオウが主薬の麻黄湯(ツムラ漢方)でも1日当たりの麻黄配合量は5g。その中に含まれるエフェドリンは

17.3mgとされていますから、防風通聖散ではその1/4程度と思われ、エネルギー消費にはあまり効果はなさそうです。ちなみに、エフェドリンは気管支拡張作用を利用して市販の咳止め薬として使われていますが、その1日量は75mgです。咳止め薬は大量に飲み続けるととても危険です(薬物乱用)。

結局は、防風通聖散は便秘薬として使われているケースが多いようですが、便通改善のために使うのは得策ではありません。緩下剤の他にカンゾウやオウゴンなど重篤な副作用を起こしやすい成分が含まれているので注意が必要です。