上手にセルフケアメディケーション

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2.OTC薬の外箱表示

2012年02月01日

 前回(2012/01/5)は、OTC薬と添付文書について次のように書きました。「外箱に書いてある情報」を見て買う人が多い。実際に外箱に書いてあるのは、必要な情報のごくごく一部である。箱の中に入っている「添付文書」には重要な情報が書いてある。この大事な添付文書は購入前には見ることができない。添付文書には薬剤師等の説明が必要な難解な記載もある。
 さて、ドラッグストアに並んでいる色とりどりのOTC薬。そのひとつを手に取ってみてみましょう。その外箱に記載されていることで一番大事なことは何でしょうか?派手な写真やキャッチコピーが目を引きますが、OTC薬を正しく安全に使うために必要な情報は、実は、小さな文字でひっそりと書かれています。一般のOTC薬の外箱あるいは直接の容器には、次のことを記載しなければなりません。
 ・製造販売業者の氏名又は名称及び住所、・名称、・製造番号又は製造記号、・重量、容量
  又は個数等の内容量、・有効(組成)成分の名称及び分量、・使用の期限、・リスク区分
この他に、添付文書に記載のある、用法、してはいけないことの注意、又副作用が起こった場合の救済制度の連絡先などが記載されています。これらの記載が公的に認められた情報です。
 では、それ以外の目立つ表示は何でしょうか?それは商品のメージや効能効果を強調するために、メーカーが自由に表示している部分です。自由にと言っても、自ずから制約はあります。
医薬品としての品位を損なうものや許可された効能効果を逸脱する表現は好ましくありません。医薬品は効能効果を期待して用いるものですから、その効果をPRすることは当然です。
しかし、最近ではテレビコマーシャルも含めて、不適切な表示が多くなってきています。不適切な表示によって、間違った薬の選択や使用方法、ひいてはセルフメディケーションが裏目に出てしまう可能性もあります。先日、ドラッグストア店頭でこんなやりとりがありました。

  50代後半の女性:コレステロール下げる薬ください
  薬剤師:コレステロールが高いのですか?
  女 性:去年も健診でひっかかったんだけど、今年は悪玉コレステロールが200以上あって、
       薬飲まなきゃダメかもしれないって言われた。テレビで「コレステロールはクスリで下げられ
       ます」って宣伝していた薬を買いたいんだけど、どれですか?
 
 たしかに、OTC薬には「高コレステロール低下薬」というものがあり、複数のメーカーから発売されています。効能として「血清高コレステロールの改善」が許可されていますが、医療用薬のような効果は期待できません。この女性はおそらく本格的な治療が必要だと思われますので、医師の診察を受けるよう説明しました。「コレステロールはクスリで下げられます」は正しいですが、OTC薬のコマーシャルとしては適切ではないと思います。薬剤師と話した人は気がつきますが、セルフで買い求めて使い続けた場合は、適切な治療の機会を失う恐れがあるからです。

 そろそろスギ花粉症の季節です。はなみず、鼻づまりとともに目のかゆみや充血に悩まされます。「花粉症の目薬」としてよく売れる目薬には、アレルギーを思わせるような名前やキャッチコピーがついていますが、効能効果をよく見ると、花粉症ともアレルギーとも書いてありません。かゆみと充血は緩和されますが、アレルギー用目薬ではありません。
 アレルギー用目薬として、「花粉、ハウスダスト等による次のような目のアレルギー症状の緩和:目のかゆみ、目の充血・・」と表示できるのは、クロモグリ酸ナトリウムとケトチフェンフマル酸塩という成分を含むものだけです。一般用目薬なのに、「 花粉・ハウスダストなどによるアレルギー症状をしずめる」「花粉アレルギーに」などの表示は、認められた効能効果を逸脱しています。アレルギーを治そうと、せっせと使うとかえって充血がひどくなる場合があります。小さな文字ですが、効能効果をよく見て薬剤師等に相談してみましょう。