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第12回 「健康食品」の食べ方 (2) アガリクスとがん

2006年04月01日

 「健康食品」に期待される効果の最大のものは「抗がん作用」でしょう。キノコ類には抗がん作用があるといわれるものが多く、なかでもアガリクスは筆頭格です。

〈アガリクスががんに効くとされるわけ〉

 がんに効くと言い伝えられてきたキノコは20種類ぐらいあるといわれ、古いものでは1500年も前の書物に記録があるそうです。しかしアガリクス(アガリクス・ブラゼイ・ムリル、ヒメマツタケ)は約40年前にブラジルから日本に送られて培養され、ベルギーのハイネマン博士によって鑑定されたという新参キノコです。現地では常食キノコだそうですが、日本では最初から薬効が期待されるキノコとして研究されました。そして次々にがんに対する効果が発表されましたが、これらは全て試験管内の実験または動物実験です。これらの結果がヒトで効くかのごとく宣伝され、科学的に信頼のおける検証がないままに、「治った」「消えた」と多くの体験談が発表されているのです。

〈アガリクスのがん抑制効果の科学的検証〉

 医療の分野の学術文献を集めている世界最大のデータベースの検索結果では、ヒトを対象にした科学的に認められた研究報告はないとのことです。

〈アガリクスの有害情報〉

◆劇症肝炎による死亡例・・・アガリクスが原因と見られる劇症肝炎で3人が死亡(2001年)、肺がん切除後の再発防止のためにアガリクスを摂り、3週間後に体調悪化。入院後死亡(2003年)など多数の報告があります。

◆発がんを促進する作用あり(ラットでの実験)・・・アガリクスを含む市販の3製品について毒性試験を実施。発がんを促進する作用を確認する試験で、1製品が促進作用ありと出たとの発表がありました。(厚労省医薬食品局発表、2006)

〈アガリクス製品の安全性〉

 アガリクスには有害成分アガリチンが含まれることが知られています。アガリチンは他の食用キノコにも含まれていて、発がんに関係の深い「変異原性」を有することがわかっています。ただしアガリクスの種類や製造方法によってはアガリチンを含まないものもあります。アガリクス製品を扱う販売業者が183商品についてアンケート形式で製品内容を調査した結果、ほとんどが公的試験機関でのアガリチン含有試検をしていないことが分かりました。

〈アガリクス製品の利用〉

 アガリクスの有効成分とされるβ-D-グルカンは、多糖類と呼ばれる食物繊維の一種です。免疫力を高めることにより抗がん作用をあらわすと言われていますが、その仕組みや効果の程度はまだ明らかではありません。研究が進んで確かな効果が示されるまでは、安全性の面から利用は慎重にすべきでしょう。