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第78回 安全・安心と情報 (6)・・予防と安心の落とし穴

2011年10月03日

 予め危険や害を防ぐ・・・予防は、私たちが健康で平和に暮らすためには欠かせない概念です。予防の大切さは皆が承知しているところですが、いざ具体的に実行となるとなかなか難しいものです。まして「○○病の予防」となると簡単ではありません。病気の中でも「感染症」、たとえば、インフルエンザ・かぜや食中毒などは原因がはっきりしているので予防は功を奏します。予防ワクチンなどもありますが、日常の健康管理の中で行う予防も有効です。しかし、この場合には正しい情報に基づいた、適切な方法で行うことが大切になります。

 一昨年から世界的に流行した新型インフルエンザ対策を思い出してみましょう。 新型インフルエンザウイルスの病原性はさほど強くはなく、症状も対策も季節性インフルエンザとほぼ同じとされています。厚生労働省から出されている対策では、「石けん手洗い」と「咳エチケット」を2本柱としています。
 インフルエンザウイルスの感染をなくする要件は、(1)ウイルスを身の周りからなくす (2)ウイルスを体に入れない (3)ウイルスをばらまかない (4)ウイルスに負けない でしょうか。このうち(1)は不可能です。(4)は個人の体力や免疫力が関係しますので、一般的ではありません。残った(2)と(3)が予防策として有効ということになります。

 ウイルスに感染した人の体内でウイルスが増え、セキやクシャミの飛沫に混じって空気中に出る。それが付着したものを触った手から食物や食器を通じて体内に入ります。そこでまず、予防対策としてはこまめな手洗いが必要になります。インフルエンザにかかった人は、空気中にウイルスを出さないことが重要なのでマスク着用をすべきです。マスクはウイルスを吸い込まないためではなく、出さないためのものです。

 さて、一昨年来のインフルエンザ騒ぎでは、人々はマスク、うがい薬、手指消毒薬、はては空気消毒剤なるものまで買いあさりました。効果が疑わしいばかりでなく、害になるものもあります。連用により手荒れやのどの炎症が起こります。

マスク : 自分がインフルエンザにかかったときや、ごく近くに感染者がいる場合以外は有効ではない。

うがい薬 : うがい薬は基本的に殺菌消毒薬。うがい程度ではウイルスを確実に洗い出す効果すらなく、ましてウイルスを殺すことはできない。最近では、「うがい」は全く科学的根拠がなく、予防効果はないとされている。

殺菌消毒剤 : アルコール、ヨード、逆性石けんなどの殺菌消毒薬や医薬部外品、さらに除菌剤と称する雑貨品まで、多数の商品が飛ぶように売れた。「殺菌消毒」でウイルスが全滅する時は人も生きてはいられない。手に付着したウイルスを確実に洗い流すことが最善策。この場合に消毒薬はいらない。

 予防は大事ですが、漫然とマスクをつけ、アルコールジェルで手をすりすりし、うがい薬で常時がらがらしていれば「万全」という安心感に、落とし穴はないでしょうか?