23.OTC薬を上手に使おう�� 喫煙と禁煙補助薬(その1)
非感染性疾患と傷害による成人死亡の決定因子のトップは喫煙・・・これは厚生労働省が
平成24年2月に公表した資料です。つまり、肺炎やインフルエンザなどの感染性の病気以
外で死亡する成人の死因として喫煙が第一位で、年間約13万人が死んでいるということ
です。三大疾病は、悪性新生物(がんなど)、循環器疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)、呼吸器
系疾患(肺気腫、COPDなど)です。
喫煙による年間死亡者数は、世界で540万人、日本では約13万人、受動喫煙による
年間死亡者は、世界で60万人、日本では約6,800人と発表されています。喫煙者は
自らの喫煙によって殺されるばかりでなく、非喫煙者をも殺していることになります。
このような事実を自覚していない喫煙者も多いと思いますが、分かっていても止められない
人も大勢います。なぜ止められないのでしょうか? 「タバコは百害あって一利なし」という
ことがはっきりしている中で、「全く止める気はない」という人にとってのメリットはなんで
しょうか?おそらく、これぞという大きなメリットはないのに、ある種の多幸感を求めているの
でしょう。これは、本人の意思と関係なく脳が吸うことを要求しているからで、これぞまさしく
「ニコチン依存症」(身体的依存)という病気なのです。
一方、一日の本数が2,3本程度である、日中仕事の時は吸わないなど軽度の喫煙者で
止められない人がいます。こちらは心理的依存といって、食事をしたら一服とか、以前の
成功体験と喫煙が結びついていて、こんな時に一服など、いわば生活習慣の一部になっ
ているケースです。こちらは、止めると決めて生活の習慣を変えるだけで、スパッと止め
られる人も多いのです。
さて、「ニコチン依存症」の方ですが、こちらは病気ですから治療が必要です。国は一定
の要件を満たすニコチン依存症に対して、医療機関で保険診療が受けられるように決め
ました。その治療で用いられるのが「禁煙補助薬」です。現在、内服薬と皮膚に貼る貼付薬
があります。まずニコチン依存がどのようにして形成されるのかを簡単に書きます。
喫煙は、タバコの先に火をつけて不完全燃焼状態で煙を吸うことです。タバコの煙を
吸うと10秒以内にニコチンが脳に入ります。すると脳内で何が起こるか?ニコチンが
脳内のニコチン受取部分(受容体)にぴたっとはまるとドーパミンなどの生理作用の
強い物質が放出されますが、このドーパミンがニコチン依存症の原因物質なのです。
ドーパミンがある神経に作用すると快感が得られます。ニコチンが切れるとこの快楽を
保つために次の喫煙を促します。一旦この経路(報酬系回路)が出来てしまうと、
この回路を回すために半永久的にニコチン補給が求められることになります。これが
タバコが止められなくなる仕組みです。では次に、依存の仕組みを断つ方法を紹介しましょう。
内服用禁煙補助薬を飲むと、薬がニコチンに先回りしてニコチン受容体をふさいでしま
うので、喫煙によって脳にニコチンが達しても快感は得られません。薬は上手く出来てい
て、ごく少量のニコチンは受け入れるように設計されているので、幾分かの満足感は得ら
れます。しかし以前のような満足感は得られないので、喫煙そのものの意味がなくなり
禁煙に成功するというわけです。
もう一つの治療法は「ニコチン置換療法」と呼ばれるもので、禁煙補助薬ニコチンパッ
チ(貼付薬)を用いる方法です。仕組みは、喫煙よりは少なく、禁断症状を起こさない程度
のニコチンを皮膚から補給し、徐々に補給量を減らして身体依存をなくすというものです。
当然この期間はしっかり禁煙する必要があります。
以上は禁煙外来での医師による治療ですが、禁煙補助薬ニコチンパッチとニコチンガムはOTC医薬品として市販されていますので、病院に行かなくても薬局やドラッグストアでサポートを受けながら自分で禁煙に挑戦することも出来ます。次回はOTC禁煙補助薬による禁煙について書きます。



