上手にセルフケアメディケーション

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知って得する「食と薬の話」
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セルフメディケーションとOTC薬
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15.上手にセルフメディケーション「賢い健康食品の利用のために」 

2017年03月05日

「上手にセルフメディケーション」は今回が最後となります。
健康な生活を維持するためのセルフメディケーション(自分の健康に責任を持ち、
食事をしっかり摂り、軽度な身体の不調はまず市販薬などを使用して手当てする)を
進める上で大きな関わりを持つ「OTC薬(市販薬)」や「健康食品」について、
2005年4月から143回にわたり書いてきました。終盤の2016年1月からは、大きく変わった
日本の食品制度について現状と問題点をとりあげ、健康食品はセルフメディケーションに
どのように役立てられるのか、また上手に取り入れるための情報は適切かなどを考えて
きました。
このシリーズのまとめとして、あらためて健康食品の賢い利用(健康を害さないための)に
ついて書いてみます。

ヒトの身体に何らかの保健的効果があると表示できる食品として国は保健機能食品という
カテゴリーを設け一般食品と区別しています。保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、
機能性表示商品)はあくまで食品ですから医薬品のような効果はなく、表示できる文言にも
制約があります。しかしこれまで何度も書いたように、医薬品並みの効果を連想させるような
商品のパッケージや宣伝によって間違った認識や利用法が広まり、時に思わぬ健康障害が
生じる可能性があります。
一般社団法人 くすりの適正使用協議会が実施した「健康食品・医薬品の知識と意識に
関する調査」の結果に表れた次の点は問題です。

*健康食品に「副作用がある」ことを理解していない人が半数以上であった 
 これは困ったことですが無理のないこととも言えます。なぜなら、食品には薬のように
副作用の情報は表示されていないからです。副作用と言ってもいろいろあります。
含まれる素材そのものの毒性もあれば、飲み合わせや食べ合わせの結果害になるもの、
あるいはアレルギー反応を起こすものなどもあります。

*健康食品と医薬品の併用を医療関係者に伝えたことがない人が半数であった。
健康食品に含まれる成分が病気そのものを悪化させたり、治療薬の副作用を強めたり、
効果を弱めたりする場合があります。医師や薬剤師に併用を伝えないと、間違った治療に
つながることもあります。

*同じ効能や機能がうたわれていても、健康食品と医薬品では「効き目が違う」ことを
理解していない人が約4割であった。
 本来健康食品に薬と同じ効能や機能が謳われることはあり得ないのです。ですから
 約4割の人は巧みな誘導や誇大な表示によって騙されているということになります。
 結果として薬との区別がつかなくなり、必要な治療が遅れることもあり得ます。

以下のような光景は日常的に医療の現場で起きており、薬剤師を悩ませています。
薬剤師が入院患者に「持参薬を確認させて下さい」というと、テーブルの上に沢山の
健康食品が並ぶそうです。成分の作用や含有量が不明な健康食品は治療の妨げに
なり得ることから使用の中止が原則ですが、自分が飲んでいるのは薬だと思い込んで
いる患者さんに対してどのように説明するかに悩むそうです。
 
不要な健康被害などを起こさないよう賢く健康食品を摂るために、健康食品に対する
正しい知識と理解を持ちましょう。健康に不安を感じたり、病気を早く治したいと思ったとき、
健康食品が自分に本当に必要なのかを考えてみましょう。そして健康食品は宣伝されて
いるほどに効果は無く、不都合なことは表示されていないということを思いだしてください。

安全性や有効性が不明確なものが多い健康食品の中から「良さそうなもの」を選ぶ
ポイントを挙げるとすれば、難消化性デキストリン(食物繊維)、大豆イソフラボン、
EPA・DHA、ビフィズス菌など通常の食事の材料等に由来するものなどでしょうか。
食事の範疇を超える不自然な成分は避け、自然な量を摂ることを目指してはいかがでしょうか。